とあるお通夜で

先日お経を上げさせて頂いたとあるお通夜。

斎場に着くと溢れんばかりの人。それに混じって柔道着を着た子供が大勢。故人は地元では結構名のある空手道場の師範先生だそう。年齢はまだ40代中盤とお若く、突然亡くなられたのだそうである。棺の中には屈強な男性の静かに横になる姿があった。

お通夜の参列者は道場関係者が多いようだったが、すすり泣きの声が絶える事はなかった。途中、100人を越える子供達(弟子)による別れの挨拶の時間がもうけられた。涙を浮かべる上級生からまだ状況をよく飲み込めていなそうなチビッ子まで、道場訓唱和の後、思い思いの礼が述べられた。普段の斎場にはあんまり似つかわしくない若々しい声だった。

お通夜の最中、自分の目の前の棺の上には故人が生前着用していた道着と帯が置かれていた。よく使い込まれた黒帯の、所々が擦り減っている姿が目に入るたびに、背筋が正される思いがした。